家や土地を売って利益(譲渡所得)が出たときにかかるのが、いわゆる「不動産売却の税金」です。中身は所得税・復興特別所得税・住民税で、給与などとは分けて計算する「分離課税」になっています(国税庁 No.1440)。

税額は「いくらで売れたか」ではなく「買ったときより、いくらもうかったか」で決まります。さらに、何年持っていたかで税率がおよそ2倍変わり、自分が住んでいた家なら3,000万円の特別控除で税金がかからないこともあります。この記事では、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在の法令等)で確かめた内容をもとに、計算方法・税率・特例・いつ払うかを順に整理しました。

計算方法(譲渡所得の式)

課税譲渡所得金額 = 譲渡価額(売った金額)−(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
税額 = 課税譲渡所得金額 × 税率(所有期間で変わる)

国税庁の計算式は、上の2段階です(No.3208・No.3211)。言葉の意味は次のとおりです。

  • 譲渡価額:売買代金など、売って受け取る金額
  • 取得費:買ったときの代金や建築代金・購入手数料など。建物は、持っていた期間の減価償却費相当額を差し引いた額になります(No.3252)
  • 譲渡費用:売るために直接かかった費用(仲介手数料など。No.3255)
  • 特別控除額:マイホームの3,000万円特別控除など、条件を満たしたときに差し引ける額

売った金額が「取得費+譲渡費用」を下回れば、譲渡所得はマイナス(損)で、この税金はかかりません。つまり売っても、利益が出なければ税金はかからないのがポイントです。

税率は所有期間で変わる(5年・10年の境目)

税率は、売った年の1月1日現在で、何年持っていたかで決まります(No.3208・No.3211)。

区分所有期間(売った年の1月1日現在)所得税住民税合計(復興特別所得税を含む)
短期譲渡所得5年以下30%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15%5%20.315%
マイホームの軽減税率(6,000万円以下の部分)家屋・敷地とも10年超10%4%14.21%

所得税・住民税の率は国税庁(No.3208・No.3211・No.3305)と名古屋市の個人住民税の案内によります。復興特別所得税は所得税額の2.1%で、国税庁の案内では平成25年から令和29年までの各年分に、所得税とあわせて申告・納付します。合計欄は、これらを足した当サイトの計算です(例:15%×1.021+5%=20.315%)。なお、2027年(令和9年)1月1日からは新たに防衛特別所得税が始まります(財務省「防衛特別所得税に関する政令要綱」)。2027年以後に売る場合は、その年分の税率を国税庁の最新の案内で確認してください。この記事の税率・計算例は2026年中の売却を前提にしています。

「5年」の数え方に注意

所有期間は、実際に売った日ではなく「売った年の1月1日」で判定します。当サイトの当てはめで例を挙げると、2021年7月に買った家を2026年中に売ると、2026年1月1日時点では4年半なので短期(39.63%)。2027年に売れば、2027年1月1日時点で5年半となり長期(20.315%)です。買ってから「5年と少し」で売る場合は、年をまたぐかどうかで税率が大きく変わります。

取得費と譲渡費用に入るもの

区分入るもの(主な例)入らないもの
取得費(No.3252)購入代金・建築代金、購入手数料、設備費・改良費、取得時の登録免許税(登記費用を含む)・不動産取得税・印紙税、測量費など事業所得などの必要経費に入れたもの
譲渡費用(No.3255)売るときの仲介手数料、売主が負担した印紙税、貸家を売るための立退料、売るために建物を取り壊した費用など修繕費、固定資産税、売った代金の取り立ての費用

買ったときに払った不動産取得税や登記費用は、自分で住む家なら取得費に足せます。一方、毎年払ってきた固定資産税やリフォームではない修繕費は差し引けません。売買契約書・領収書は、売るときまで保管しておくと計算に使えます。

建物は「減価償却」で取得費が減る

自分で住んでいた(事業に使っていない)建物の減価償却費相当額は、次の式で計算します(No.3261)。

減価償却費相当額 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
償却率:木造0.031/(鉄骨)鉄筋コンクリート0.015 など。経過年数の6か月以上は1年に切り上げ、6か月未満は切り捨て。取得価額の95%が上限。

マンションは土地(敷地の持ち分)と建物に分かれていて、減るのは建物の部分だけです。売買契約書に建物と土地の内訳が書かれていれば、その金額を使います。

取得費が分からないときは「売った金額の5%」

親から受け継いだ家や、買った時期が古くて契約書が見つからない場合は、売った金額の5%を取得費にできます(No.3258)。国税庁の例では、3,000万円で売って取得費が分からなければ、150万円が取得費です。実際の取得費が5%より少ない場合も5%を使えます。ただし、5%では取得費がかなり小さくなり、譲渡所得が大きく計算されやすいので、契約書や通帳の記録を探してみる価値があります。

税金がかからない?マイホームの3,000万円特別控除

自分が住んでいる家(家屋と敷地)を売ったときは、所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例・No.3302)。利益が3,000万円以下なら、課税される譲渡所得は0円になります。

主な条件は次のとおりです(No.3302の要約)。

  • 住んでいる家、または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家であること
  • 家を取り壊して土地を売る場合は、取り壊しから1年以内に売買契約を結び、住まなくなってから上と同じ期限までに売ること(その間に貸駐車場などに使っていないこと)
  • 売った年の前年・前々年に、この特例やマイホームの買換え・交換の特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないこと
  • 親子・夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものではないこと
  • 特例を受けるためだけに住んだ家、新築の間の仮住まい、別荘などではないこと

税金が0円でも確定申告が必要
特例を受けるには、確定申告書に「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)〔土地・建物用〕」を添えて出します(No.3302)。

住宅ローン控除との関係(住み替えの人は要注意)

新しい家に住んだ年・その前年・前々年にこの3,000万円特別控除を受けると、新しい家で住宅ローン控除が受けられません。入居した年の翌年から3年目までに古い家を売ってこの特例を受けた場合も同じです(No.3302)。住み替えで両方を考えている人は、どちらが得かを先に確かめておくと安心です。住宅ローン控除で戻る額の計算は住宅ローン控除2026の記事で解説しています。

10年超なら軽減税率(3,000万円控除と併用可)

売った年の1月1日現在で、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えるマイホームを売った場合は、長期譲渡所得の税率がさらに軽くなります(マイホームを売ったときの軽減税率の特例・No.3305)。

課税長期譲渡所得金額(A)所得税住民税
6,000万円以下の部分A × 10%A × 4%
6,000万円を超える部分(A − 6,000万円)× 15% + 600万円超える部分は5%

所得税はNo.3305、住民税は名古屋市の案内(市民税3.2%+県民税0.8%=4%)によります。所得税には別に復興特別所得税(2.1%)がかかります。この特例は3,000万円特別控除と重ねて使えます。親族など特別の関係がある人への売却や、前年・前々年にこの特例を受けている場合は使えません。

いくら?計算例(マンション売却のモデルケース)

ここからは、国税庁の計算式・税率を当てはめた当サイトの試算です(実在の物件・取引ではありません。所得税の100円未満の切り捨てなど細かな端数処理は省いています)。

例1:自宅マンションを買値より高く売った場合

2015年3月に4,000万円(建物2,000万円・土地2,000万円)で買った鉄筋コンクリート造のマンションに住み、2026年6月に6,000万円で売ったとします。分かりやすくするため、買ったときの諸費用は0円とし、譲渡費用は仲介手数料の上限額だけとしました。

項目計算金額
建物の減価償却費相当額2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 11年(11年3か月→6か月未満を切り捨て)297万円
取得費土地2,000万円 + 建物(2,000万円 − 297万円)3,703万円
譲渡費用(仲介手数料の上限)(6,000万円 × 3% + 6万円)× 1.1204.6万円
譲渡所得6,000万円 −(3,703万円 + 204.6万円)2,092.4万円
3,000万円特別控除を使う場合2,092.4万円 − 2,092.4万円(控除は利益の額まで)= 0円税額0円
特例を使えない場合(長期・20.315%)2,092.4万円 × 20.315%約425万円

同じ売却でも、3,000万円特別控除が使えるかどうかで約425万円の差になります。たとえば住まなくなってから人に貸し、期限(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日)を過ぎてから売ると、特例が使えない可能性があります。仲介手数料の上限の計算方法はマンション売却の流れと査定の記事で解説しています。

0円
3,000万円控除あり(当サイト試算)
約425万円
特例なし・長期の場合
2,092万円
このモデルの譲渡所得

例2:短期と長期でどれだけ違う?(課税譲渡所得1,000万円)

区分所得税+復興特別所得税住民税合計
短期(5年以下)300万円 + 6.3万円90万円396.3万円
長期(5年超)150万円 + 3.15万円50万円203.15万円

利益が同じでも、短期は長期の約2倍の税金になります。

例3:10年超の軽減税率を重ねた場合(利益5,000万円)

譲渡所得が5,000万円で、3,000万円特別控除を引いた課税長期譲渡所得が2,000万円の場合です。

  • 10年超の軽減税率:所得税200万円(10%)+復興特別所得税4.2万円+住民税80万円(4%)=284.2万円
  • 通常の長期(10年以下):2,000万円 × 20.315% = 406.3万円

持っていた期間が10年を超えるかどうかで、約122万円の差になる計算です。

売って損が出たとき

譲渡所得がマイナスなら、この税金はかかりません。さらに、マイホームを買い換えて損が出た場合は、一定の条件でその損を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)し、引ききれない分を翌年以後3年内に繰り越せる特例があります(No.3370)。主な条件は次のとおりです。

  • 2027年(令和9年)12月31日までに古い家を売ること
  • 売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていること
  • 新しい家(床面積50㎡以上)を取得し、取得した年の12月31日時点で償還期間10年以上の住宅ローンがあること
  • 繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること(超える年は使えない)

この特例も確定申告が必要で、繰り越すには損失の申告を続けて出す必要があります。

いつ払う?確定申告と納付の時期

  1. 売った年の翌年に確定申告:所得税の確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(No.2020)。会社員で年末調整を受けている人も、不動産を売って譲渡所得が出たときや特例を使うときは確定申告をします。
  2. 所得税の納付期限も3月15日:申告と納付の期限は、原則として翌年3月15日です(No.2020)。
  3. 住民税は所得税と別に納める:住民税は所得税とは別に、お住まいの市区町村に納めます。納め方・時期は市区町村の案内で確認してください。

売ったお金を受け取ってから税金を払うまで、1年近くあくことがあります。次の家の購入費などに使い切ってしまわないよう、税金の分を分けて置いておくと安心です。売却代金の置き場所を考えるときは、姉妹サイトの新NISAの基本(金融研究所)も参考になります。

まとめ

  • 不動産売却の税金は、利益(譲渡所得)にかかる所得税・復興特別所得税・住民税。式は「売った金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」。
  • 税率は売った年の1月1日現在の所有期間で決まる。5年超は20.315%、5年以下は39.63%(復興特別所得税を含む当サイト計算)。
  • 建物の取得費は減価償却費相当額を差し引く。取得費が分からなければ売った金額の5%。
  • マイホームなら3,000万円特別控除で税金0円になることも。ただし確定申告が必要で、住宅ローン控除と同時には使えない期間がある。
  • 家屋・敷地とも10年超なら、6,000万円以下の部分は所得税10%・住民税4%の軽減税率(3,000万円控除と併用可)。
  • 申告は売った年の翌年2月16日〜3月15日。お金を受け取ってから払うまで間があくので、税金の分を取り分けておく。

出典・注意書き

基準日:2026年11月時点(国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等に基づく記載。いずれも確認日時点の公式ページ)

例1〜例3と、税率表の「合計」欄、「5年」の数え方の例は、上の資料の計算式・税率を当てはめた当サイトの計算で、実在の取引や実際の税額を示すものではありません。

ご注意

  • この記事は一般的な制度の解説です。個別の税額の計算や申告の相談には応じていません。特例を使えるかどうか・実際の税額は、税務署や税理士にご確認ください。
  • 相続した家の売却(取得費加算・空き家の3,000万円特別控除など)、事業用・貸付用の不動産、買換えの特例などは、この記事では扱っていません。
  • 税率・特例の期限や要件は、法改正で変わることがあります。住民税の扱いはお住まいの市区町村の案内もご確認ください。特定の物件や売買をおすすめするものではありません。

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