マンションを売ろうとすると、「査定」「媒介契約」「仲介手数料」といった言葉が次々に出てきます。どれも初めてだと、何を基準に選べばよいのか分かりにくいものです。

この記事では、売却の流れを順番にたどりながら、査定の仕組み、査定額と実際に売れる価格(成約価格)の違い、媒介契約の3つの種類、仲介手数料の上限を整理します。数字や決まりは、宅地建物取引業法などの法令、国土交通省の資料、業界団体の資料だけを使いました。

マンション売却の流れ(8つの手順)

不動産流通推進センター(旧・不動産流通近代化センター)の資料では、住まいを売る流れが次のように整理されています。当サイトで8つの手順にまとめ直しました。

  1. 相場を知る:売却価格の目安を立てるため、近くの似たマンションがいくらで取引されているかを自分でも調べます。
  2. 不動産会社を探す:自宅と同じようなマンションを扱った経験のある会社を、いくつか選びます。
  3. 査定を頼む:まず簡易な査定で価格と各社の対応を比べ、次に現地を見てもらう査定へ進みます。
  4. 媒介契約を結ぶ:売却の仲介を頼む会社を決め、契約を結びます。売り出し価格もここで決めます。
  5. 売り出す:物件情報が公開され、購入希望者を探す活動が始まります。
  6. 購入希望者と交渉する:価格や引き渡し時期などの条件を調整します。
  7. 売買契約を結ぶ:物件の情報を買主に説明したうえで、契約します。
  8. 引き渡す:代金を受け取り、物件を引き渡します。利益が出たときは、翌年に確定申告が必要になる場合があります(後述)。

この中で売主の判断が最も問われるのは、3(査定)から4(媒介契約・売り出し価格)の部分です。次の章から順に見ていきます。

査定の仕組み|机上査定と訪問査定

査定とは、不動産会社が「このマンションならこのくらいの価格で売れそうだ」という意見を示すことです。上の資料では、マンションの査定は事例比較法で行われることが多いと説明されています。同じような取引事例を選び、立地や階数などの条件を比べて価格を出す方法です。

資料に載っている例では、取引事例が1平方メートルあたり10万円で、その事例を100点としたとき、査定する住戸が110点なら、1平方メートルあたり11万円と計算します。評点をつける項目は、所在階・方位・眺望・維持管理の状況・耐震性などです。

机上査定(簡易査定)訪問査定
やり方現地には行かず、周辺の取引事例や公的なデータから算出する担当者が自宅を訪れ、住戸とマンション全体の状態を調べる
見るもの周辺の取引事例、公的なデータ(自宅の中は見ない)所在階・方位・維持管理の状況・騒音・眺望、共用設備、耐震性、修繕計画など(目視が中心)
向いている場面最初の段階で、各社の価格や対応を比べる売り出し価格を決める段階
準備するもの自宅への訪問がないため、立ち会いは不要購入時の売買契約書、リフォームの工事請負契約書、設計図書、住宅性能評価書などの書類

査定は通常、無料です。机上査定は「大まかな価格と会社の対応を知るためのもの」、訪問査定は「売り出し価格の根拠にするためのもの」と考えると使い分けやすくなります。

査定には根拠を示す決まりがあります:宅地建物取引業法第34条の2第2項は、不動産会社が売り出しの価額や評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。金額だけでなく、どの事例とどう比べたのかを聞いてみましょう。

査定額・売り出し価格・成約価格の違い

売却の過程では、似た言葉がいくつも出てきます。上の資料の「売買価格が決まるまでの流れ」をもとに整理すると、次のとおりです。

言葉誰が決めるか意味
売主の希望価格売主「このくらいで売りたい」という気持ちの価格
査定額(査定価格)不動産会社会社が根拠を示して述べる、売れそうな価格の意見
売り出し価格売主希望価格と査定額をふまえ、実際に広告に出す価格
購入申込価格買主買いたい人が示す価格(売り出し価格と同じとは限らない)
成約価格(売買価格)売主と買主の合意交渉のすえ、実際に契約した価格

ここで押さえたいのは、査定額は「売れる金額の保証」ではなく、会社の意見だということです。最終的な価格は、売主と買主が合意したときに初めて決まります。

資料によると、提示された査定額は、そのときの市況や周辺の取引の動きを考えて、向こう3か月程度で成約することを目安にしているのが一般的です。つまり、早く売りたいのか、時間がかかっても高く売りたいのかで、売り出し価格の決め方は変わります。

査定額を比べるときは、金額の高さだけで会社を選ばず、「その根拠は何か」「3か月で売れる想定か」を確認しましょう。実際に成約した価格の例は、国土交通省の不動産情報ライブラリ(不動産価格=取引価格・成約価格情報の検索)で、地区・築年・広さ別に調べられます。東京のマンション価格全体の動きは東京のマンション価格推移の記事も参考にしてください。

媒介契約の3つの種類

売却の仲介を不動産会社に頼むときに結ぶのが媒介契約です。国土交通省の標準媒介契約約款には、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3つの型があり、どれを選ぶかは売主が決めます。

一般媒介専任媒介専属専任媒介
ほかの会社にも重ねて頼むできるできないできない
自分で見つけた買主と直接契約するできるできるできない
指定流通機構(レインズ)への物件登録法律上の義務はない(契約で登録するかを決める)契約の日から7日以内(休業日は数えない)契約の日から5日以内(休業日は数えない)
売主への業務報告法律上の定めはない2週間に1回以上1週間に1回以上
契約の有効期間標準約款では3か月以内3か月以内(法律)3か月以内(法律)

ここで出てくる「指定流通機構」は、国土交通大臣が指定した、不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組みです。専任媒介と専属専任媒介では、会社に登録する義務があります(宅地建物取引業法第34条の2第5項、同法施行規則第15条の10)。有効期間は更新できますが、更新のたびに3か月を超えることはできません。

どれが一番よいかは、売主の状況によって変わります。当サイトは特定の型をすすめません。比べるときの目安は次のとおりです。

  • 1社に任せたい・報告をこまめに受けたい:専任系は報告の頻度と登録期限が法律で決まっています。専属専任は、自分で買主を見つけても、その会社を通す必要があります。
  • 複数の会社に頼みたい:一般媒介は重ねて頼めますが、報告や登録の決まりがありません。標準約款の「明示型」では、ほかに頼む会社を最初の会社に知らせる義務があります。

契約を結ぶときは、不動産会社が書面を渡すことになっています。書面には売却する価額(または評価額)、有効期間、解除、報酬に関する事項などが書かれます(宅地建物取引業法第34条の2第1項)。サインの前に、種類・期間・報酬の額を読んで確認しましょう。

仲介手数料の上限

仲介手数料は、売買が成立したときに不動産会社へ払う報酬です。宅地建物取引業法第46条は、報酬の額は国土交通大臣が定め、その額を超えて受け取ってはならないと決めています。上限は国土交通省の告示(昭和45年建設省告示第1552号)で定められています。

売買の媒介で、依頼者の一方から受け取れる上限(消費税を含む)は、取引価格を区切って次の割合をかけ、合計して求めます。

取引価格のうちかける割合(税込)
200万円以下の部分5.5%
200万円を超え400万円以下の部分4.4%
400万円を超える部分3.3%

400万円を超える取引では、全体をまとめて「価格×3.3%+6.6万円(税込)」と計算しても同じ結果になります(消費税率10%の場合・当サイト計算)。たとえば次のとおりです。

売却価格仲介手数料の上限(税込)
3,000万円105.6万円
5,000万円171.6万円
8,000万円270.6万円
  • あくまで「上限」:実際の額は、媒介契約を結ぶ前に不動産会社と話し合って決めます。国土交通省は2024年の見直しで、媒介契約の締結にあたり、あらかじめ上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意する必要があることを通達(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)に明記しました。
  • 成功したときの報酬:標準約款では、不動産会社の媒介によって売買契約が成立したときに、報酬を請求できる形になっています。査定そのものは通常、無料です。
  • 800万円以下の特例:売買代金が800万円以下の物件(低廉な空家等)は、手間に見合うよう、上限が「30万円の1.1倍(33万円)」になります。2024年7月1日から施行されています。

売って利益が出たときの税金

買ったときより高く売れて利益(譲渡所得)が出ると、税金がかかることがあります。自分が住んでいたマイホームを売る場合には、国税庁が案内する居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除という特例があり、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。

ただし、住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売ること、親子や夫婦など特別な関係の人に売ったものではないことなど、要件があります。特例を受けるには確定申告が必要です。自分が当てはまるかどうかは、税務署や税理士に確認してください。

査定を頼む前に確かめたいこと

  1. 相場を自分でも調べる:不動産情報ライブラリで、近くの似たマンションの取引価格を見ておくと、査定額が相場から外れていないか判断しやすくなります。
  2. 複数の会社で比べる:簡易査定を何社かに頼み、価格だけでなく説明の分かりやすさや対応も見ます。
  3. 根拠を聞く:どの事例と比べたのか、どこを高く・低く評価したのかを確認します。
  4. 売り方を先に決める:早く売りたいのか、時間がかかっても高く売りたいのかを決めてから、売り出し価格を相談します。
  5. 契約の中身を読む:媒介契約の種類・有効期間・報酬の額を、サインの前に確認します。
  6. 書類をそろえる:購入時の契約書やリフォームの書類があると、訪問査定が進めやすくなります。

まとめ

  • 売却は「相場を知る→査定→媒介契約→売り出し→交渉→契約→引き渡し」の順に進む。
  • 査定は机上(簡易)査定で価格と対応を比べ、訪問査定で売り出し価格の根拠を固める。不動産会社は査定の根拠を示す義務がある。
  • 査定額は会社の意見であり、成約価格は売主と買主が合意して初めて決まる。
  • 媒介契約は一般・専任・専属専任の3つ。他社への依頼、自己発見の買主との契約、報告の頻度が違う。
  • 仲介手数料には法律で上限がある(400万円超の部分は3.3%・税込)。額は契約前に説明を受け、合意してから決める。

出典・注意書き

基準日:2026年10月時点(法令は2026年10月時点でe-Govに掲載されている条文を確認)

仲介手数料の計算例は、上の告示の割合から当サイトが計算しました(消費税率10%・売買代金に消費税がかからない場合)。査定の流れと「向こう3か月程度で成約」の目安は2011年の資料に基づく一般的な説明で、会社によって運用は異なります。

ご注意

  • 法令・告示・約款は基準日時点の内容です。改正されることがあるため、契約の前に最新の内容を確認してください。
  • 査定額や売却にかかる費用は、物件や会社によって異なります。この記事の数字は上限や目安であり、実際の売却価格や手数料を示すものではありません。
  • 税金の扱いは個々の事情で変わります。税務署や税理士にご確認ください。
  • 特定の物件の売却や、特定の不動産会社・契約の型をおすすめするものではありません。

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