住宅ローンの借り換えは、金利の低いローンに乗り換えて利息を減らす方法です。ただし、借り換えには数十万円単位の諸費用がかかるため、金利が下がっても、諸費用を差し引くと得にならないことがあります。

この記事では、まず借り換えの諸費用の種類と目安を、法令(登録免許税法・租税特別措置法)、国税庁、金融機関の公式ページで確認します。そのうえで、金利差・残高・残り年数を一つずつ変えたモデルケースを当サイトで計算し、どこが「得と損の境目(損益分岐)」になるかを試算しました。変動金利に借り換えたあとで金利が上がった場合の試算も載せています。

金利の仕組みそのもの(変動型と固定型の違い、日銀の政策金利との関係)は、住宅ローンの変動金利と固定金利の記事で解説しています。

借り換えで得になる仕組み

借り換えは、新しい金融機関からお金を借りて、今のローンを一括で返す手続きです。得になるかどうかは、次の引き算で考えます。

借り換えの得=(今のローンを続けた場合の返済総額 − 新しいローンの返済総額)− 借り換えの諸費用

金利差による利息の減り方は、金利差が大きいほど、残高が多いほど、残り年数が長いほど大きくなります。一方、諸費用の多くは借入額に比例するか、ほぼ定額です。そのため、残高が少ない、または残り年数が短いと、金利が下がっても諸費用を取り戻せないことがあります。

借り換えの諸費用|種類と目安

借り換えのときにかかる主な費用です。金額や率は、法令で決まっているものと、金融機関ごとに違うものがあります。

費用中身目安(確認した資料)
事務手数料(融資手数料)新しいローンを借りるときに金融機関へ払う借入額の2.2%(税込)の定率型の例:三菱UFJ銀行、りそな銀行。金融機関・商品によって定額型もある
保証料保証会社に払う。一括で前払いする型、金利に上乗せする型、保証料なしの商品があるりそな銀行:保証料は金利に含まれ、別に保証会社事務取扱手数料55,000円(税込)。三菱UFJ銀行の該当商品:保証料不要
登録免許税(抵当権の設定)新しいローンの抵当権を登記するときの税金債権金額の0.4%(登録免許税法 別表第一)
登録免許税(抵当権の抹消)今のローンの抵当権を消す登記の税金不動産1個につき1,000円(同)
印紙税新しいローンの契約書(金銭消費貸借契約書)にかかる契約金額1,000万円超5,000万円以下で2万円、500万円超1,000万円以下で1万円(国税庁)
今のローンの完済手数料今のローンを一括で返すときの手数料三菱UFJ銀行の例:インターネット16,500円、店頭窓口33,000円(税込)
司法書士への報酬など登記の手続きを頼む費用依頼先によって違う(この記事では仮に10万円で計算)

登録免許税は「0.1%」ではなく「0.4%」で計算

家を買うときの住宅ローンでは、抵当権の設定登記の税率が0.1%に下がる特例(租税特別措置法第75条)があります。ただしこの特例は、住宅用家屋の新築または取得をするための資金の貸付けで、新築・取得の後1年以内に登記を受けるものに限られています(適用期限は2027年3月31日)。借り換えの新しいローンは、今のローンを返すための借入れなので、この記事では本則の0.4%で計算しました。実際の税率は、登記を頼む司法書士や法務局で確認してください。

戻ってくるお金がある場合も

今のローンで保証料を一括で前払いしている場合、途中で完済すると、保証料の一部が戻ることがあります。戻る額は保証会社の規定や残りの期間で変わるため、この記事の試算には入れていません。今の金融機関に確認すると、そのぶん借り換えの負担を小さく見積もれます。

モデルケースの前提

ここからの試算は、すべて次の前提で当サイトが計算したものです。金利は説明のための仮の数字で、特定の金融機関の金利ではありません。

  • 返済方法:今のローンも新しいローンも、元利均等返済・ボーナス返済なし。
  • 借り換え額:今のローンの残高と同じ額を借り、残り年数も今と同じにそろえる。諸費用は手持ちのお金で払う。
  • 金利:今のローンは年1.8%(基本の例)。新しいローンの金利は、最後まで変わらないと仮定(変動金利が上がる場合は、後半で別に試算)。
  • 諸費用:事務手数料(借入額の2.2%)+登録免許税(設定0.4%・抹消は土地と建物の2個で2,000円)+印紙税+今のローンの完済手数料33,000円+司法書士の報酬など10万円(仮)。保証料は別にかからない商品と仮定。
  • 比べ方:利息の差は、返済総額の単純な差(将来のお金の価値の割引はしない)。住宅ローン控除、団信の保険料の違い、保証料の戻り、火災保険などは入れていない。

基本の例(残高2,500万円・残り25年)の諸費用は、次のとおり合計約80.5万円です。

内訳(残高2,500万円の場合)金額
事務手数料(2.2%)55万円
登録免許税(抵当権の設定0.4%)10万円
登録免許税(抵当権の抹消2個)2,000円
印紙税2万円
今のローンの完済手数料3.3万円
司法書士の報酬など(仮)10万円
合計約80.5万円

いちばん大きいのは事務手数料です。定額型の事務手数料と保証料を組み合わせる商品なら、内訳と合計は変わります。

試算1|金利差で比べる

残高2,500万円・残り25年、今の金利1.8%のローンを、金利の違うローンに借り換えた場合です(当サイト計算)。

新しい金利(金利差)毎月の返済の減り返済総額の減り諸費用を引いた得
1.6%(0.2%)約2,400円約71.5万円約9万円の損
1.5%(0.3%)約3,600円約106.9万円約26.4万円
1.3%(0.5%)約5,900円約176.8万円約96.3万円
1.0%(0.8%)約9,300円約279.8万円約199.3万円
0.8%(1.0%)約1万1,600円約347.2万円約266.7万円

今の毎月の返済額は約10万3,500円です。金利差0.2%でも毎月約2,400円は減りますが、25年分を足しても約71.5万円で、諸費用の約80.5万円に届きません。この例の損益分岐は、金利差およそ0.23%でした。

試算2|残高で比べる

金利差を0.5%(1.8%→1.3%)、残り年数を25年に固定して、残高だけを変えました(当サイト計算)。

残高返済総額の減り諸費用諸費用を引いた得
1,000万円約70.7万円約40.5万円約30.2万円
1,500万円約106.1万円約54.5万円約51.6万円
2,000万円約141.5万円約67.5万円約74.0万円
2,500万円約176.8万円約80.5万円約96.3万円
3,500万円約247.6万円約106.5万円約141.1万円

残高が増えると、利息の減りも諸費用も増えます。ただ、諸費用には完済手数料や司法書士の報酬のようなほぼ定額の部分があるため、残高が少ないほど諸費用の重みが大きくなります。1,000万円では、利息の減りの半分以上(約57%)が諸費用で消えています。

試算3|残り年数で比べる

残高2,500万円、金利差0.5%(1.8%→1.3%)で、残り年数だけを変えました(当サイト計算)。

残り年数返済総額の減り諸費用を引いた得
5年約32.6万円約47.9万円の損
10年約66.2万円約14.3万円の損
15年約101.5万円約21.0万円
20年約138.4万円約57.9万円
25年約176.8万円約96.3万円
30年約216.8万円約136.3万円

諸費用は残り年数に関係なく約80.5万円です。同じ金利差0.5%・同じ残高でも、残り10年以下では損になりました。残り年数が短いほど、大きな金利差が必要になります。

損益分岐の早見表

今の金利1.8%を基準に、諸費用を差し引いて得になるのに必要な金利差を、残高と残り年数ごとに計算しました(当サイト計算・小数第3位を四捨五入)。この差より金利が下がれば得、届かなければ損、という目安です。

残高\残り年数10年15年20年25年30年
1,000万円0.77%0.50%0.36%0.28%0.23%
2,000万円0.64%0.41%0.30%0.24%0.19%
3,000万円0.59%0.38%0.28%0.22%0.18%

今の金利を1.3%や2.5%に変えて計算しても、残高2,500万円・残り25年の損益分岐は0.21〜0.23%で、大きくは変わりませんでした。損益分岐は、今の金利の高さよりも、残高・残り年数・諸費用の額で決まると言えます。諸費用が上の前提より高ければ、必要な金利差も大きくなります。

よく見る目安「金利差1%・残高1,000万円・残り10年」を試す

借り換えの目安として「金利差1%以上・残高1,000万円以上・残り10年以上」という言い方を見かけることがあります。公的な基準ではありませんが、この条件ちょうどの場合を、同じ前提で計算しました。

52.6万円
返済総額の減り(1.8%→0.8%・残高1,000万円・残り10年)
40.5万円
諸費用(同じ前提)
12.1万円
諸費用を引いた得

得にはなりますが、約12万円です。司法書士の報酬などが仮置きの10万円より高い、事務手数料が高い、といった条件が重なると、ほとんど残りません。一方で、早見表のとおり、残高が多く残り年数が長い人は、金利差1%よりずっと小さい差でも得になる計算です。目安の数字にあてはめるより、自分の残高・残り年数・見積もりの諸費用で計算するほうが確かです。

変動金利に借り換えて、金利が上がったら

ここまでは、新しいローンの金利が最後まで変わらない前提でした。実際には、変動金利に借り換えると、借りたあとに金利が上がることがあります。日本銀行は2026年9月18日の会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.25%程度に引き上げました(9月24日から適用)。次の会合は10月29日・30日で、この記事の基準日(10月29日)の時点では結果は出ていません。

そこで、今の固定金利1.8%(残高2,500万円・残り25年)から、変動金利1.0%に借り換え、5年後に金利が上がって、残り20年はその金利が続くと仮定して計算しました(当サイト計算。5年ルール・125%ルールは考えず、5年後に返済額を計算し直す仮定)。

5年後の金利の上がり幅6年目からの毎月の返済諸費用を引いた得
上がらない(1.0%のまま)約9万4,200円約199.3万円
+0.5%(1.5%)約9万8,900円約88.0万円
+0.8%(1.8%)約10万1,700円約19.5万円
+1.0%(2.0%)約10万3,600円約26.8万円の損
+1.5%(2.5%)約10万8,600円約144.9万円の損

最初の5年間は毎月約9,300円軽くなりますが、5年後に金利が1%上がると、6年目からの返済額は借り換え前(約10万3,500円)とほぼ同じになり、諸費用を含めると損になりました。固定から変動への借り換えは、「金利が上がったらどこで逆転するか」までセットで確かめる必要があります。逆に、変動から固定への借り換えは、金利が上がっても返済額が変わらない安心と引き換えに、今より金利が高くなることが多く、この記事の「得」の計算では表しきれない面があります。

数字のほかに確かめたいこと

  • 住宅ローン控除:国税庁によると、借り換え後も控除を受けるには、新しいローンが当初のローンを返すためのものだと明らかで、返済期間が10年以上であることなどの要件を満たす必要があります。控除の対象になる年末残高は、借り換え直前の残高が新しい借入額より少ない場合、按分して減ります。また、借り換えをしても控除の期間は延びません。
  • 団信(団体信用生命保険):借り換えると、新しいローンの団信に入り直すのが一般的です。健康状態の告知などで、加入できる条件や保障の中身が今と変わることがあります。保障の範囲と保険料の扱いもあわせて比べましょう。
  • 審査:借り換えも新しい借入れなので、金融機関の審査があります。今の収入や物件の評価によっては、希望どおりに借りられないことがあります。
  • 返済期間の延ばしすぎ:返済期間を延ばすと毎月の返済は減りますが、利息の合計は増えることがあります。この記事の試算は、残り年数をそろえて比べています。

借り換えを考える手順

  1. 今のローンの数字を集める:残高、残り年数、今の金利と金利タイプ、完済手数料、保証料の戻りの有無(返済予定表と契約書で確認)。
  2. 新しいローンの見積もりを取る:金利だけでなく、事務手数料・保証料・登記費用まで含めた諸費用の総額を出してもらう。
  3. 損益分岐を計算する:この記事の早見表は目安です。自分の数字で「返済総額の減り − 諸費用」を計算します。
  4. 金利が上がった場合も計算する:変動金利にするなら、1%上がった場合などで、得が残るかを確かめます(考え方は変動金利と固定金利の記事)。
  5. 控除・団信・審査の条件を確かめてから申し込む。

まとめ

  • 借り換えの得は「返済総額の減り − 諸費用」。諸費用は、事務手数料(定率型で借入額の2.2%の例)、登録免許税(設定0.4%・抹消1個1,000円)、印紙税(1,000万円超5,000万円以下で2万円)、完済手数料、司法書士の報酬など。
  • 残高2,500万円・残り25年の例では、諸費用は約80.5万円、損益分岐の金利差はおよそ0.23%(当サイト試算)。
  • 残高が少ないほど、残り年数が短いほど、必要な金利差は大きい。残高1,000万円・残り10年なら約0.77%。
  • 「金利差1%・残高1,000万円・残り10年」ちょうどの例では、得は約12万円にとどまった。
  • 固定1.8%から変動1.0%に借り換えて、5年後に金利が1%上がると、諸費用を含めて損になる計算。金利が上がった場合まで試算してから決める。

出典・注意書き

基準日:2026年10月29日時点(日本銀行の決定は2026年9月18日分まで。金融機関の手数料は確認日時点の公式ページ)

返済額・返済総額・損益分岐は、元利均等返済(ボーナス返済なし)で当サイトが計算した概算です。金利は説明のための仮の数字で、特定の金融機関の金利ではありません。司法書士の報酬などの10万円は当サイトの仮置きです。利息の差は返済総額の単純な差で、住宅ローン控除・団信の保険料・保証料の戻り・火災保険などは含めていません。

ご注意

  • この記事の試算は、前提を置いたモデルケースの目安です。実際に得になるかどうかは、金融機関の見積もり(金利・諸費用)と、ご自身の残高・残り年数で計算してください。
  • 手数料・保証料・税金の扱いは、金融機関・商品・登記の内容によって異なり、変わることがあります。登録免許税の税率は、登記を依頼する司法書士や法務局でご確認ください。
  • 変動金利は、借りたあとに金利が上がり、返済額や返済総額が増えるリスクがあります。将来の金利を予想するものではありません。
  • 住宅ローン控除の扱いは、税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
  • 特定の金融機関・商品・借り換えをおすすめするものではありません。

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