住宅ローンを選ぶとき、最初に迷うのが「変動金利にするか、固定金利にするか」です。近ごろは日本銀行が政策金利を引き上げており、ニュースで金利の話題を目にする機会も増えました。
この記事では、金利タイプの違い、日銀の政策金利との関係、実際に借りた人がどちらを選んでいるか、返済額の考え方(計算例つき)、変動金利の5年ルール・125%ルール、団信(団体信用生命保険)を整理します。数字は日本銀行、住宅金融支援機構、金融機関の公式ページから確認しました。将来の金利を予想する記事ではありません。
住宅ローンの金利タイプは3つ
住宅金融支援機構の調査では、住宅ローンの金利タイプを「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つに分けています。
| タイプ | 金利の決まり方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 変動型 | 半年に1回程度見直される。日本銀行の政策金利の影響を受ける | 金利が下がれば返済の負担が軽くなる。一般に、全期間固定型より金利が低い傾向。金利が上がれば負担が増え、借りるときに返済額を見通せない |
| 固定期間選択型 | 一定の期間だけ金利を固定し、期間が終わったら、固定か変動かをあらためて選ぶ | 固定している間は返済額が変わらない。期間が終わった時点の金利で、その後の返済額が変わる |
| 全期間固定型 | 借りるときに、返済が終わるまでの金利と返済額が決まる。その時点の10年物国債利回り(長期金利)の影響を受ける | 金利が上がっても返済額は変わらない。金利が下がっても恩恵はない。一般に変動型より金利が高い傾向 |
全期間固定型の代表が、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供するフラット35(最長35年)です。なお、フラット35は投資用の物件を買う資金には使えません。
日銀の政策金利と住宅ローン金利の関係
日本銀行は、金融政策決定会合で「無担保コールレート(オーバーナイト物)」の誘導目標を決めています。これがいわゆる政策金利です。直近の変更は次のとおりです(日本銀行の公表資料)。
| 決定日 | 無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標 |
|---|---|
| 2025年12月19日 | 0.75%程度 |
| 2026年6月16日 | 1.0%程度 |
| 2026年9月18日(9月24日から適用) | 1.25%程度 |
2026年9月の決定は、政策委員9人のうち賛成7・反対2でした。日本銀行は声明で、今後も経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げて金融緩和の度合いを調整していくことになる、との考えを示しています。ただし、調整のタイミングやペースは、中東情勢や為替などの影響を点検しながら検討するとしており、次の動きが決まっているわけではありません。
政策金利は、どうやって変動金利に届くのか
変動金利の住宅ローンは、各金融機関が決める基準金利(多くは短期プライムレート)に連動して、半年ごとに見直されます。三菱UFJ銀行の解説によると、多くの金融機関では、日本銀行が政策金利を引き上げると、短期プライムレートなどの指標が見直され、一定のタイムラグを経て住宅ローンの変動金利に反映されます。
一方、全期間固定型は、その時点の長期金利(10年物国債利回り)の影響を受けます。住宅金融支援機構は、固定金利は物価や成長の見通しが反映されやすく、変動金利より先に上がることがある、と説明しています。
実際に適用される金利は、金融機関ごとに違います:政策金利が同じでも、基準金利からどれだけ引き下げる(優遇する)かは、金融機関や商品、借りる人の条件で変わります。この記事では、特定の金融機関の金利は載せていません。
実際に借りた人は何を選んでいるか
住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)」は、2025年4月から9月に実際に住宅ローンを利用して住宅を取得した1,237人への調査です。利用した金利タイプは次のとおりでした。
変動型が4分の3を占めていますが、前回の調査から減り、固定型が増えています。また、今後1年間の住宅ローン金利の見通しを聞いたところ、「現状よりも上昇する」と答えた人が73.7%(前回比8.0ポイント増)でした。
もう一つ注目したいのが、金利上昇への備えです。変動型または固定期間選択型を使っている1,112人のうち、「将来、金利が上昇した場合に、返済額がどれくらい増えるか」について、「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」と答えた人の合計は52.0%でした。さらに、月々の返済額が増えた場合の対応を聞くと、「返済の目処や資金余力があるので返済を続ける」と答えた人は、1万円増なら58.8%、3万円増では24.2%に下がっています。
返済額の考え方|4,000万円を借りた場合の計算例
金利が返済額にどれくらい影響するかを、計算で確かめます。「元利均等返済」(毎月の返済額が一定になる方式)で、4,000万円を35年(420回)で借り、金利が最後まで変わらないと仮定しました(ボーナス返済なし・当サイト計算)。
| 金利(年) | 毎月の返済額 | 総返済額 | うち利息 |
|---|---|---|---|
| 1.0% | 約11.3万円 | 約4,742万円 | 約742万円 |
| 1.5% | 約12.2万円 | 約5,144万円 | 約1,144万円 |
| 2.0% | 約13.3万円 | 約5,565万円 | 約1,565万円 |
| 3.0% | 約15.4万円 | 約6,465万円 | 約2,465万円 |
| 3.83% | 約17.3万円 | 約7,268万円 | 約3,268万円 |
1.0%と2.0%を比べると、毎月の返済額は約1万9,600円、利息の合計は約820万円違います。なお、3.83%は、フラット35の2026年10月の最頻金利(金融機関が提供する金利で最も多いもの)のうち、6年目以降の金利です(融資率9割以下・新機構団信付)。同じ月の当初5年間は、金利を年1.0%引き下げる制度を使った場合で2.83%と案内されています。
変動金利では、金利が借りている間に何度も変わるため、この表のように「ずっと同じ金利」にはなりません。あくまで「金利が1%、2%違うと、返済がこのくらい変わる」という物差しとして使ってください。
変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」
変動金利の住宅ローンでは、金利が半年ごとに見直されても、毎月の返済額はすぐには変わらない仕組みが使われていることがあります。三菱UFJ銀行や三井住友信託銀行は、元利均等返済の場合について、次のように説明しています。
- 5年ルール:返済額は5年ごとに見直す。見直しまでは、金利が変わっても返済額は変わらず、「元金」と「利息」の内訳だけが変わる。
- 125%ルール:5年ごとの見直しで返済額が増える場合も、新しい返済額は、それまでの返済額の125%までに抑えられる。
- 未払利息:金利が大きく上がり、利息だけで毎月の返済額を超えた分は「未払利息」となり、後で支払う。最後の返済日に残高が残ると、原則として一括で返済する(三菱UFJ銀行の例)。
- 元金均等返済には、5年ルールも125%ルールもない。金利の変化がそのまま毎月の返済額に反映される。
たとえば、上の表の1.0%で借り、毎月の返済額が約11.3万円(112,914円)とします。5年後(残高は約3,511万円)に金利が3.0%になったと仮定して、残りの30年で計算し直すと、毎月の返済額は約14.8万円になります。これは、それまでの約1.31倍です。しかし125%ルールがあると、新しい返済額の上限は約14.1万円(112,914円の1.25倍)で済みます(当サイト計算・仮の例)。
ルールは「負担の先送り」でもあります:上限があっても、利息の負担そのものが減るわけではありません。返済額を抑えた間は元金が減りにくく、総返済額が増えることがあります。これらのルールは金融機関や商品によって違い、適用されない商品もあります。借りる前に、自分の商品の説明書で確認しましょう。
団信(団体信用生命保険)とは
団信は、住宅ローンを借りるときに加入する保険で、返済の途中で借りた人に万一のことがあったとき、保険金で残りのローンが返済される仕組みです。金融機関や商品によっては、加入が借りる条件になっています。金利の比較と並んで確かめたいポイントです。
住宅金融支援機構のフラット35の団信(機構団信)の案内では、死亡、または所定の高度障害状態になったときに残りのローンが弁済されるとされています。がん・急性心筋梗塞・脳卒中も対象にした「3大疾病付」もあります。一方、告知義務に違反して契約が解除された場合や、保障が始まる前の傷病が原因の高度障害の場合などは、弁済されません。
- 保障の中身は商品ごとに違う:対象になる病気や状態、加入できる条件(健康状態の告知など)は、金融機関や商品によって異なります。
- 保険料の負担方法も違う:フラット35では、2017年10月1日以降の申込分(新機構団信)は、保険料に相当する分が毎月のローン返済に組み込まれています。ほかの金融機関や商品では扱いが異なるため、保険料が金利に含まれるのか、別に払うのかを確認しましょう。
- 団信は金利上昇のリスクを補うものではありません:住宅金融支援機構は、金利の変動リスクは保険でカバーできないと説明しています。
選ぶときに確かめたいこと
住宅金融支援機構は、それぞれのタイプが向いている人を次のように整理しています。
| タイプ | 向いている人(機構の整理) |
|---|---|
| 変動型 | 金利が上がっても返済に問題がない人、将来の支出が減る予定の人、返済期間が短い人 |
| 全期間固定型 | 金利が上がると返済が厳しくなる可能性がある人、将来の支出増に備えたい人、返済額を確定させたい人 |
- 金利が上がったときの返済額を試算する:上の表のように、金利が1%、2%上がったら毎月いくら増えるかを、無理なく払える範囲か確かめましょう。
- 「実行時金利」を知る:フラット35や、ほとんどの民間ローンは、申し込んだ時点ではなく、資金を受け取る(融資が実行される)時点の金利が適用されます。申込後に金利が上がると、資金計画に影響することがあります。
- 返済のルールを読む:5年ルール・125%ルールの有無、未払利息の扱い、優遇金利が使える期間を、説明書で確認します。
- 団信の中身と費用を比べる:保障の範囲、加入条件、保険料の負担方法を、金利とあわせて比べます。
- 借りられる額と、返せる額は別:価格が上がるほど借入額も大きくなりがちです。東京のマンション価格の推移も踏まえ、金利上昇に耐えられる予算で考えましょう。
まとめ
- 住宅ローンの金利は、変動型・固定期間選択型・全期間固定型の3タイプ。変動型は政策金利の影響を、全期間固定型は長期金利の影響を受ける。
- 日本銀行の誘導目標は、2026年9月18日の会合で1.25%程度に引き上げられた(9月24日から適用)。変動金利にはタイムラグを経て反映される。
- 2026年1月調査で借りた人の75.0%が変動型。一方、今後1年の金利が「上昇する」と見る人は73.7%。
- 4,000万円・35年の例では、金利が1.0%から2.0%になると、毎月の返済額が約1万9,600円増える。
- 5年ルール・125%ルールは返済額の急な増加を抑えるが、負担を先送りする面もある。団信は金利上昇を補うものではない。
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点(日本銀行の決定は2026年9月18日分まで。フラット35の金利は2026年10月分)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2025年12月19日):https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/k251219a.pdf
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日):https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日):https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)」(概要・調査結果):https://www.jhf.go.jp/about/research/loan_user.html(概要PDF:https://www.jhf.go.jp/files/topics/4955_ext_99_0.pdf)
- 住宅金融支援機構「“金利のある世界”でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう」:https://www.flat35.com/lp/kinri/index.html
- フラット35(住宅金融支援機構)トップページ「2026年10月の最頻金利」:https://www.flat35.com/
- フラット35「金利の決定時期は?」:https://www.flat35.com/hajimete/atoz/03.html
- フラット35「債務弁済される場合、債務弁済されない場合」(機構団信):https://www.flat35.com/danshin_menu/danshin/bensai.html
- フラット35「団体信用生命保険」(新機構団信の保険料の扱い):https://www.flat35.com/danshin_menu/
- 三菱UFJ銀行「住宅ローンの5年ルール・125%ルールとは?」:https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/column/008/index.html
- 三井住友信託銀行「変動金利型住宅ローンの特徴や仕組み」:https://www.smtb.jp/personal/loan/house/house-column/column-03
返済額・総返済額・利息は、元利均等返済(ボーナス返済なし・金利は最後まで一定)で当サイトが計算した概算です。実際の返済額は、金融機関の計算方法や手数料などで異なります。5年ルール・125%ルールの例は、仮の数字による説明です。
ご注意
- 金利・制度は基準日時点の公表内容です。将来の金利を予想するものではなく、今後の金利が上がる・下がるとお伝えするものでもありません。
- 変動金利は、借りたあとに金利が上がり、返済額や総返済額が増えるリスクがあります。固定金利は、借りたあとに金利が下がっても、その恩恵を受けられません。
- 住宅ローンの商品内容・審査・団信の保障は、金融機関や契約によって異なります。契約の前に、金融機関の最新の説明書をご確認ください。
- 特定の金融機関・商品・金利タイプをおすすめするものではありません。