中古マンションの広告を見比べると、同じくらいの広さでも修繕積立金が月1万円台の物件と2万円を超える物件があります。高いから悪い、安いから良いとは言い切れません。修繕積立金は、建物の年齢と、お金の貯め方の計画(積立方式)で大きく変わるからです。

この記事では、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(いずれも2024年6月改訂)と「令和5年度マンション総合調査」をもとに、新築から築40年までを年数の順にたどり、いつ・どんな工事があって積立金が上がるのかを整理しました。最後に、同じ総額でも積み立て方で毎月の負担がどう変わるかを当サイトで試算しています。

目安の答え:国土交通省のガイドラインでは、20階未満・延床面積5,000㎡未満のマンションで平均335円/㎡・月(70㎡なら月2万3,450円)。全国平均は1戸あたり月1万3,054円(2023年度)です。

修繕積立金とは?管理費との違い

マンションで毎月払うお金には、管理費と修繕積立金があります。管理費は清掃や管理会社への委託など日々の管理の費用、修繕積立金は外壁・防水・配管などの将来の大きな工事のための貯金です。長期修繕計画作成ガイドラインでは、修繕積立金は管理費と区分して経理することが必要とされています。

積立金の額は、何年目にどの工事をしていくらかかるかをまとめた長期修繕計画から決めます。計画期間は30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とされ、5年程度ごとの見直しが望まれるとされています。

修繕積立金の目安・相場は?(国土交通省ガイドライン)

マンションの修繕積立金に関するガイドラインは、実際の長期修繕計画366事例をもとに、計画期間全体の平均で、専有面積1㎡あたり月いくらかの目安を示しています(機械式駐車場の分を除く)。

地上階数・建築延床面積平均値事例の3分の2が包含される幅
20階未満・5,000㎡未満335円/㎡・月235〜430円
20階未満・5,000㎡以上1万㎡未満252円/㎡・月170〜320円
20階未満・1万㎡以上2万㎡未満271円/㎡・月200〜330円
20階未満・2万㎡以上255円/㎡・月190〜325円
20階以上338円/㎡・月240〜410円

たとえば70㎡の部屋で335円なら月2万3,450円です。機械式駐車場がある場合は、機種ごとの1台あたりの修繕工事費(例:3段・ピット2段の昇降式で月5,840円/台)を総専有床面積で割って上乗せします。なお、ガイドラインには、目安の範囲に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではない、とも書かれています。

修繕積立金の平均と推移(全国)

マンション総合調査による、1戸あたり月の修繕積立金の平均です。

調査年度修繕積立金使用料などからの充当を含む総額
1999年度(平成11年度)7,378円9,184円
2003年度(平成15年度)9,066円10,967円
2008年度(平成20年度)10,898円11,877円
2013年度(平成25年度)10,783円11,800円
2018年度(平成30年度)11,243円12,268円
2023年度(令和5年度)13,054円13,378円

国土交通省の資料は、近年の工事費の高騰を踏まえ、均等積立方式であっても計画を適時に見直し、必要に応じて積立金を引き上げる必要があると周知する方針を示しています。

修繕積立金が上がるタイミング:新築から築40年までの工事

長期修繕計画作成ガイドラインに示された修繕周期の例を、年数の順に並べました。実際の時期は、マンションの仕様・立地・劣化の状況で変わります。

新築〜築5年:積立金が安い理由は「段階増額」

大きな工事はまだ先です。多くの新築マンションでは、最初の積立金を低めに設定し、あとから段階的に上げる段階増額積立方式が使われています。マンション総合調査(2023年度)では、2015年以降に完成したマンションの81.2%が段階増額積立方式でした(全体では47.1%)。

築5〜12年:小さめの工事

工事修繕周期の例
鉄部の塗装(階段・手すりなど)5〜7年
給水ポンプ・排水ポンプの補修5〜8年
機械式駐車場の補修5年
自走式駐車場の補修8〜12年

築12〜15年:1回目の大規模修繕

足場を組んで、外壁の塗装・タイル補修・シーリングの打ち替え、屋上やバルコニー・廊下の防水、エレベーターの補修などをまとめて行う時期です(いずれも周期の例は12〜15年)。ガイドラインは、経済性を考えて工事をまとめる(集約する)ことを検討するとしています。

築13〜23年:設備の取り替えが始まる

工事修繕周期の例
空調・換気設備の取替13〜17年
給水ポンプ・排水ポンプの取替14〜18年
インターホン設備・テレビ共聴設備の取替15〜20年
電灯設備・自動火災報知設備の取替18〜22年
機械式駐車場の取替18〜22年
給水管・排水管の更生(内側をきれいにして延命)19〜23年

築24〜30年:2回目の大規模修繕

工事修繕周期の例
大規模修繕(2回目)24〜30年目程度
屋上防水の撤去・新設(1回目は補修・修繕)24〜30年
外壁塗装の除去・塗装24〜30年
エレベーターの取替26〜30年
貯水槽の取替26〜30年

築28〜45年:配管の取り替えと3回目

工事修繕周期の例
ガス管・配電盤類・幹線設備の取替28〜32年
給水管・排水管の取替30〜40年
手すり・建具(扉・窓など)の取替36年前後
大規模修繕(3回目)36〜45年目程度

年数がたつほど、塗り替えや補修だけでなく「取り替え」が増えていきます。さらに国土交通省の資料では、40歳で新築を買ったと仮定して平均収入と積立金の推移を比べ、おおむね築15年(50代半ば)を超えると収入は減る傾向がある一方、積立金は年々上がる傾向があり、計画どおりの引き上げが難しくなることが見込まれる、と指摘しています。

均等積立方式と段階増額積立方式、値上げの目安

積み立て方仕組みガイドラインの扱い
均等積立方式計画期間中、同じ額を積み立てる将来にわたって安定的に確保する観点から望ましい
段階増額積立方式当初の額を抑え、段階的に値上げする早期に引き上げを完了させることが望ましい

2024年6月の改訂で、段階増額積立方式の上げ方の目安が加わりました。均等積立方式とした場合の月額を基準額として、

最初の額は基準額の0.6倍以上、最後の額は基準額の1.1倍以内

とする考え方です。これは、実現できる引き上げで早めに均等積立へ近づけることが目的で、工事費の高騰などを踏まえた見直しで大幅な引き上げをすることを制限するものではない、と注記されています。

試算:同じ総額でも値上げの仕方で毎月の負担が違う

当サイトの試算です。専有70㎡、計画期間30年、基準額を335円/㎡・月(20階未満・5,000㎡未満の平均値)とし、30年で集める総額はどれも844万2,000円にそろえました。段階の倍率は、当サイトが置いた仮の計画です。

積み立て方(仮の計画)月額の動き最初の10年最後の10年
均等積立30年間 2万3,450円281.4万円281.4万円
段階A(目安の範囲内)
0.6倍→1.0倍→1.1倍
1〜5年 1万4,070円 → 6〜10年 2万3,450円 → 11〜30年 2万5,795円225.1万円309.5万円
段階B(範囲外)
0.5倍→1.0倍→1.5倍
1〜10年 1万1,725円 → 11〜20年 2万3,450円 → 21〜30年 3万5,175円140.7万円422.1万円
2.3万円
均等積立の月額(30年間同じ)
2.6万円
段階Aの最後の月額(1.1倍)
3.5万円
段階Bの最後の月額(最初の3倍)

総額は同じでも、範囲外の段階Bでは最後の10年に約422万円を払う計算で、均等積立より約141万円多くなります。国交省の資料が指摘するように、収入が減る時期に負担が重くなる計画は、予定どおり引き上げられないおそれがあります。

修繕積立金の不足の割合と、計画の見直しの実態

36.6%
残高が計画に対して不足している(2023年度)
39.9%
不足していない(不明は23.5%)
63%
5年ごとを目安に定期的に見直している

2018年度の調査では「不足している」は34.8%でした。また2023年度の調査では、購入するときに長期修繕計画を「よく確認した」区分所有者は、新築・中古とも1割に満たず、中古で買った人の約半数は「ほとんど確認していない」か「確認していない」と答えています。

修繕積立金が高い・安いと感じたら確かめること

  1. 長期修繕計画の期間と見直しの時期:30年以上あるか。最後に見直したのはいつか。
  2. 積み立て方:均等か段階増額か。段階増額なら、何年目にいくらへ上がる予定か(最初0.6倍以上・最後1.1倍以内の目安と比べる)。
  3. 今の残高:計画の予定残高に足りているか。
  4. 総会の議事録:値上げ・一時金・借入れの話が出ていないか。

購入前なら、重要事項の説明や、仲介会社を通じて管理会社から受け取る資料で数字を確認できます。将来の値上がりに備えて手元の資金を計画的に用意する方法は、姉妹サイトの新NISAの仕組み(金融研究所)でも、制度の要点とリスクを解説しています。マンションを売るときの手順はマンション売却の流れの記事、毎年の税金は固定資産税の仕組みの記事をご覧ください。

まとめ

  • 修繕積立金は将来の工事の貯金。管理費と分けて経理し、30年以上の長期修繕計画で額を決める。
  • 全国平均は1戸あたり月7,378円(1999年度)から13,054円(2023年度)へ。
  • 大規模修繕の山は築12〜15年・24〜30年・36〜45年ごろ(例)。設備の取り替えは年数とともに増える。
  • 国の目安は、20階未満・5,000㎡未満で平均335円/㎡・月、20階以上で338円/㎡・月。
  • 段階増額なら、最初0.6倍以上・最後1.1倍以内が上げ方の目安。同じ総額でも、範囲外の計画では最後の負担が重くなる(当サイト試算)。

出典・注意書き

基準日:2026年10月29日時点(各資料は確認日時点の国土交通省の公表資料)

試算の金額は、ガイドラインの目安の平均値(335円/㎡・月)と、当サイトが置いた仮の積立計画(倍率)から計算した概算です。実際の長期修繕計画の金額ではありません。

ご注意

  • 修繕周期はガイドラインに示された例です。実際の工事の時期と費用は、マンションの仕様・立地・劣化の状況・工事費の動きによって異なります。
  • 目安の範囲に入っていないことが、そのまま不適切であることを意味するわけではありません。判断は、各マンションの長期修繕計画と管理組合の資料でご確認ください。
  • 将来の積立金の額や、マンションの価格・資産価値を予想・保証するものではありません。特定の物件や売買をおすすめするものではありません。

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